突然ですが、香港から鉄道を乗り継いでバンコクまで行くことはできるのでしょうか。以前は鉄道のみで移動するのは難しかったのですが、2021年にそれが可能になりました。
中国ラオス鉄道の開業です。
それまで鉄道路線がほとんどなかったラオスですが、中国・昆明からラオスを南北に縦断し首都ヴィエンチャンまでを結ぶ鉄道は、国内の移動を劇的に改善しました。2024年7月からは、バンコクからの夜行列車が国境を越えてラオスに乗り入れるようになり、中国側・タイ側ともにラオスへのアクセスが向上し、旅行者がより気軽に訪れられる国になりました。
そこで、中国高速鉄道から中国ラオス鉄道、さらにタイ国鉄を乗り継いで、香港からバンコクまで鉄道で旅行してみることにしました。
私が旅行したのは2024年9月だったので、中国のビザが必要でしたが、11月30日からは中国のビザ免除措置が再開され、より気軽にこの旅行ができるようになっています。
中国ラオス鉄道に乗って、より身近になった中国とラオスを旅行されてはいかがでしょうか。
1日目 東京→香港→昆明
LCC深夜便で東京から香港へ
午前0時前、羽田空港。
LCCは基本的に成田空港発着ですが、深夜時間帯は成田空港の離発着が制限されているため、24時間離発着可能な羽田空港発着になります。安く効率よく移動ができるため、ありがたい存在です。
午前1時発の香港エクスプレスの搭乗率はそこまで高くなく、隣が空席だったので快適に過ごせました。LCCは機内サービスが無いのですぐに寝られて逆にいいですよね。
香港には早朝4時頃に到着。(あまり嬉しくない)早着です。公共交通は5時半頃まで動かないので、しばし待機します。
空港から市内への移動は、機場快線(Airport Express)が速く一般的ですが、今回は特に急いでいないので節約移動をします。
バスターミナルの案内に従って進み、S1系統のバスに乗ります。空港周辺の施設を巡回し、対岸にある東涌線の終点東涌駅までを結ぶバスです。
香港駅までの運賃は、機場快線が110HKDなのに対して、東涌線は24.3HKDなので、バスの運賃(5HKDくらい)を加えたとしてもかなり安く移動できます。
昆明行きの高速鉄道の発車は12時05分なので、それまでの時間はお粥を食べたり、トラムに乗ったり、香港を満喫しました。
香港・西九龍駅から中国高速鉄道に乗る
香港から中国に陸路で移動するには、MTR東鉄線を終点まで乗車し、歩いて深圳側に移動する方法と、中国高速鉄道に乗る方法があります。今回は昆明まで行くので後者を選びました。中国高速鉄道は香港にも乗り入れており、中国の各都市とを乗り換えなしで移動することができます。
昆明南行きの列車は1日1本、12時5分の発車です。香港の出境と中国の入境審査をする必要があるため、余裕を持って10時に到着しました。
中国高速鉄道の予約は、Trip.comや中国鉄路の公式サイト「鉄路12306」などで行うことができます。パスポート情報を紐づけることにより、パスポートが乗車券代わりになります。記念に紙の乗車券を受け取って乗ることができるか窓口で聞いてみたのですが、出てきたのは座席案内のような紙でした。香港は英語が通じるので不自由なくなんでもできていいですね。
昼食等の買い物を済ませて出境審査を無事に終え、いよいよ中国の入境審査です。異常な数の監視カメラが並び、それまでとは異質な空気が漂います。一人一人の審査は思ったほどには時間がかかりませんが、並んでる人に対して開いているゲートが少ないので時間がかかります。列車の時間が迫っていて焦っている人を見かけたので、なるべく余裕を持つのがいいかと思います。私はビザを取っていたこともあり、特に何も聞かれず人生初の中国入国はあっさり完了。40分ほどで一連の審査を通過できました。
中国鉄路は列車別改札になっていて、発車15分前~5分前までしか改札が開かないため、それまでは広い待合スペースで待ちます。11時50分、時間通りに改札が開きました。
中国高鉄G408車次 香港西九龍→昆明南
ホームで待っていたのは18両編成の車両。昆明までは7時間38分の長旅です。さすが大陸はスケールが違いますね。ワクワクが止まりません。
12時4分、列車は西九龍駅を出発しました。中国鉄路では改札が5分前に締め切られ、乗車が完了し次第出発するため、早発はよくあることです。
バンコクまでの長い旅路がいよいよスタートです。
乗車率は高く、8割ほどの席が埋まっているように見えます。中国人が大半ですが、西洋人の姿も見られます。
地下にある西九龍駅からしばらくはトンネル区間が続きます。15分くらい走り、トンネルを抜けるとそこは大都市・深圳。交差する道路はもちろん右側通行で、いよいよ中国に入ったことを実感します。ほどなくして最初の停車駅、深圳南に到着です。
中国の高速鉄道は網目のような路線同士を連絡線が複雑に接続しており、高速道路のジャンクションのよう。複々線も当たり前です。単一路線を超高頻度運転させる日本の新幹線とは根本的にシステムが違うので、比較をするのはナンセンスです。
1時間ほど走り広州南を出ると、いよいよ内陸部に入っていきます。次の桂林西まではなんと400km、2時間も無停車です。
西九龍駅で買ったサンドイッチを食べていると、車窓には特徴的な形をした山が見えてきました。このあたりで有名なタワーカルストという地形だそうです。絵を見ているような、不思議な気分になります。
隣の席の人はリクライニング全開でふんぞり返って寝ており、後ろの人はイヤホンもつけず音量最大で動画を観ていて、快適とは程遠い環境ですが、これも中国旅行の醍醐味ということにしておきましょう。
桂林西を出ると、また2時間無停車で、次は貴陽北です。先ほどから「地名+東西南北」という駅名が連続していますが、これも中国ならでは。高速鉄道は都市中心部までは乗り入れず、郊外に各方面それぞれ別のターミナル駅があるため、このような駅名が多くなっています。
17時5分、貴陽北では乗客の半分ほどが降りました。日本人にはあまり馴染みのない都市ですが、人口は600万ほどで、かなりの大都市です。ここまでかなりの距離を走ってきましたが、ちゃんと定時運行です。各駅停車時間に余裕があるので、ホームで体を動かしたり、煙草を吸っている人が多くいます。
貴陽北の次は、終点の昆明南。ですがまだ2時間半ほどかかります。車窓左手には雄大な景色が広がります。9月ですし、中国の中でも西の方に来ているので、日没は遅く、まだまだ車窓を楽しめます。
途中何度か車内放送があり、どうやら徐行運転をする区間があったようです。列車が遅れるのかと思いましたが、終点の昆明南には10分の早着となりました。日本の新幹線では早着は滅多にないですが、中国高鉄の乗車方法・ダイヤはともに飛行機のそれに近いと考えれば、納得がいきますね。
到着した昆明南駅は昆明市中心部から25km程度離れていて、地下鉄でなんと1時間弱かかります。日本で例えるなら、東海道新幹線の起点「東京南駅」が横浜にあるような感覚です。不便ではないのでしょうか。中国における高速鉄道駅は空港のような存在のようです。
中国ラオス鉄道も昆明南駅が始発なので、宿は昆明南から地下鉄で2駅の「联大街」の近くに取りました。昆明では2泊します。
昆明南駅からホテルへ
中国では電子決済が主流で、現金はほとんど使われていません。日本から20元(4000円程度)持っていきましたが、あまり使う機会はありませんでした。Alipayに登録しておけばほぼ全て事足ります。ちなみに日本でもAlipayが使える店がありますが、日本人のアカウントでは中国国外では使えないようです。事前に試せないので中国で使えるか不安でしたが、問題なく使えました。地下鉄もAlipayアプリ内で乗車用QRコードを発行し改札にかざすだけで乗れます。非常に便利です。
手荷物検査を済ませ、地下鉄に乗ります。自分のモバイルバッテリーがなぜか毎回検査に引っ掛かるのでちょっと煩わしかったです。
座席のデザインがかわいいですね。
联大街の駅を降りると、まさかの土砂降り。スコールでしょうか。地元の人もあたふたしてたので珍しいのかもしれません。待っても止みそうにないので、駅近くの飲食店に適当に駆け込みます。雲南省の名物、米線(米の麺)がメニューにあったので、指差して注文。店員さんが中国語で何か言ってますが「没有」だけは聞き取れたので、じゃあこれは?と別の米線を指さしたら、そっちは大丈夫のようでした。Alipayで決済。15元(約300円)くらい。安くて美味しかったです。
雨が弱まったので、今日の宿に移動しチェックイン。フロントのスタッフの方は中国語しか話せないようでしたが、翻訳アプリを使って会話できました。
中国では同じ建物に別のホテルが入っていることがあります。今日のホテルはフロントと客室が別の建物で、フロントから客室に行くには一旦建物を出て隣の建物に入り、別のホテルのフロントの前を通過してエレベータに乗るという、なかなか不思議なことになっていました。セキュリティとか大丈夫なんでしょうか。
客室は広くて新しい割に、一泊4500円程度。中国は都会的で便利なうえに物価が安く、旅行するにはコスパがいい国だと思います。
ちなみに泊まった宿はここです。中国のホテル予約はTrip.comがおすすめです。中国では宿泊登記ができない宿には外国人は泊まれないので、予約の際は外国人の宿泊レビューがあるかを必ず確認した方がいいと思います。
翌日は昆明を観光します。第2話に続く。